
近年、公務員試験で増えているのが社会人採用・経験者採用枠です。新卒から受験するのではなく、数年間社会人としての経験を持った人が応募できる採用枠を設定している自治体が増えてきています。国家公務員でも一部、社会人・経験者採用枠が設定されるようになりました。
以下に、社会人・経験者採用枠について解説していきます。
1.地方公務員における社会人採用について
社会人・経験者採用については、国家公務員よりも地方公務員の方が積極的だといえます。新卒の公務員採用以外で、社会人・経験者を採用するための専用枠を設定している自治体をいくつか挙げるだけでも以下のものが挙げられます。
自治体 |
試験名 |
職種・試験区分 |
受験資格 |
東京都 |
キャリア活用採用 |
事務、土木など |
各職種ごとに必要経験の条件あり |
神奈川県 |
中途採用試験 |
行政 |
31~59歳まで |
埼玉県 |
経験者職員採用 |
一般行政、心理など |
各職種ごとに必要経験の条件あり |
千葉県 |
社会人採用選考考査 |
土木、建築など |
各職種ごとに必要経験の条件あり |
千葉市 |
民間企業等職務経験者 |
行政、土木など |
各職種ごとに必要経験の条件あり |
横浜市 |
社会人採用試験 |
事務、社会福祉など |
各職種ごとに必要経験の条件あり |
大阪府 |
採用試験(社会人等) |
行政、技術 |
26~34歳まで |
大阪市 |
社会人経験者社会福祉 |
社会人経験者社会福祉 |
相談援助業務経験2年以上など |
さいたま市 |
民間企業等経験者(行政事務) |
行政事務 |
直近10年中に通算5年以上の職務経験 |
福岡市 |
社会人経験者 |
行政、社会福祉、建築 |
各職種ごとに必要経験の条件あり |
福岡県 |
民間企業等職務経験者採用試験 |
行政 |
5年以上の職務経験 |
自治体によって職種や応募要件が異なるので注意が必要です。ただし、いずれの自治体においても、受験年齢が高めに設定されていることがほとんどなので、社会人から転職を考える場合には、応募しやすい試験が多いと言えるでしょう。
2.国家公務員における社会人採用について
国家公務員採用試験においても社会人・経験者採用試験が行われています。代表的なものは以下の通りです。
試験名 |
職種・試験区分 |
受験資格 |
一般職社会人試験(係員級) |
高校卒業程度 |
40歳未満、義務教育を終了後、5年経過 |
経験者採用試験(係長級(事務)) |
大学卒業程度 |
大学、大学院卒業後2年経過、職務経験2年以上 |
総務省経験者採用試験(係長級(技術)) |
大学卒業程度 |
職務経験12年以上 |
外務省経験者採用試験(書記官級) |
大学卒業程度 |
英語などのうちいずれか1か国語以上の外国語の能力 |
国税庁経験者採用試験(国税調査官級) |
大学卒業程度 |
職務経験8年以上 |
農林水産省経験者採用試験(係長級(技術)) |
大学卒業程度 |
大学、大学院卒業後4年経過 |
国土交通省経験者採用試験(係長級(技術)) |
大学卒業程度 |
大学、大学院卒業後2年経過、職務経験2年以上 |
官公庁経験者採用試験(係長級(事務)) |
大学卒業程度 |
大学、大学院卒業後7年経過、職務経験7年以上 |
気象庁経験者採用試験(係長級(技術)) |
大学卒業程度 |
大学、大学院卒業後8年経過、職務経験8年以上 |
3.社会人採用の注意点
社会人・経験者採用試験は、多くの場合、受験するための要件として職務経験が必要になります。会社などで仕事をしてきた経験を公務員の仕事においても活かしてくれるような即戦力が期待されていることがわかります。
採用された場合は、それらの職務経験が給与面においても考慮されることも多いので、新卒の職員よりもその意味では有利だと言えるでしょう。
また、採用試験の問題も新卒職員の採用試験よりも簡単であることが多く、時間の無い社会人にとっては勉強の負担が軽くなるとも言えます。とはいえ、全くの無試験というのはあまりないので、一定程度の対策と勉強は必要でしょう。
一方で、社会人・経験者採用試験の難点としては、採用人数が新卒職員採用試験よりも少ないことが多い点です。採用職員数全体としてみると、新卒職員の方が圧倒的に多く、社会人・経験者の採用人数はかなり限定的であることが一般的です。ですので、卒業後、1、2年程度の場合、新卒の採用試験を受験する人の方が多い印象です。
また、1次試験に合格したとしても、その次の2次試験の面接試験では、それまでの職務経験が深く問われることが多く、ここでも職務経験を活かした即戦力が期待されていることが見て取れます。その意味でも、これから新卒職員はこれから育てていくことを想定しているのに対して、社会人・経験者はこれまでの経験を活かした即戦力を発揮しなければならないという違いがあることも意識しておきましょう。
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