自衛官採用試験の特徴・レベル
自衛官は、日本の国防を担う、特別職の国家公務員です。陸上自衛隊・海上自衛隊・航空自衛隊のいずれかに所属し、海外からの軍事的な脅威に対処するだけでなく、地震・津波・台風・大雨・洪水・土砂崩れ・大雪などの自然災害が発生して出動要請が出されると、国民の生命を守るために活動します。
自衛官の採用試験は、受験区分が多岐にわたるため、自衛官としてのキャリア設計を十分に検討できていないと、自分がどの区分を受験すればよいか、迷ってしまいます。
今回は、「自衛官の採用試験のレベル、問題の特徴」について解説します。
1 自衛官 採用試験の区分・レベル
自衛官採用試験には、いくつかの区分があります。区分によって、合格の難易度は大きく異なります。
大きな区分は、「任用年度」の違いであり、「任期制」(1任期:約2~3年)と「非任期制」(終身雇用)に分かれています。
「任期制」と「非任期制」の違いは、「階級」の上下によるものです。
自衛隊には、一般的な軍隊のような「階級」があります。
上から、将官(しょうかん)(幕僚長、将、将補)、左官(さかん)(一佐、二佐、三佐)、尉官(いかん)(一尉、二尉、三尉)、曹(そう)(曹長、一曹、二曹、三曹)、士(し)(士長、一士、二士)のように定められています。将官、左官、尉官が「幹部」であり、曹、士は「曹士」と呼ばれます。
曹は、幹部を補佐し、士を指導する階級です。
これらの階級のうち、将官、左官、尉官、曹が「非任期制自衛官」(終身雇用)であり、士は「任期制自衛官」(1任期:約2~3年)になります。
なお、「非任期制自衛官」は「終身雇用」になってはいますが、「精強性の維持」(「部隊」の強さを維持すること)のため、「若年定年制」となっています。一般的な公務員の定年は60歳(2021年現在)ですが、自衛官の定年の年齢は、三曹、二曹は53歳、一曹~三佐までは55歳、二佐は56歳、一佐は57歳、将補、将が60歳、幕僚長が62歳です。退職時期は、退職年齢の誕生日です。(退職年齢後の年度末ではありません)
将官以外の幹部を含め、「非任期制自衛官」の定年が、概ね53~57歳であることは認識しておきましょう。
「任期制自衛官」(士長、一士、二士)の1任期は約2~3年(陸上自衛官は、1年9カ月。海上自衛官・航空自衛官は、2年9カ月(2任期目以降は2年))で、1任期が終了するごとに更新することができます。任期満了時には「特例退職手当」が支給されます。
ただし、無制限に任期を更新できるわけではありません。一般的に、多い場合でも4~5任期を経過すると退職を勧められることになります(部隊の精強性の維持のため)。
なお「任期制自衛官」のうち、「士長」の階級で一定期間勤務すると、「非任期制自衛官」への昇進試験を受験する機会が与えられる場合があります。ただし、勤務成績が極めて優秀である者に限られるため、実際に昇進できる人数は極めて少なく、狭き門であることを認識する必要があります(曹以上の階級の定員が定められているため)。
「非任期制自衛官」を目指す場合、「一般曹候補生」や「自衛隊 幹部候補生」に合格し、「非任期制自衛官」として入隊した方が良いでしょう。
なお、自衛官は退職が近くなると、再就職のためのサポートを受けることができるようになっています。この再就職サポートは手厚いため、自衛官を退職した後の再就職に大きく寄与しています。
次に、自衛官の採用試験区分について解説します。
「非任期制自衛官」の区分としては、「自衛隊 幹部候補生」と「一般曹候補生」の採用試験があります。「任期制自衛官」の区分としては、「自衛官候補生」の採用試験があります。
これらの採用試験区分の中に、それぞれ、「陸上自衛隊」・「海上自衛隊」・「航空自衛隊」の所属先の区分と、「男性」・「女性」の性別の区分があります。
最も難易度が低いのが「自衛官候補生」採用試験です。
採用されると3カ月間の教育・訓練の後、「二士」に任官され、「任期制自衛官」となります。
その後は9カ月で「一士」に昇任し、さらに1年後には「士長」に昇任します。一定期間が経過すると、「三曹」(非任期制自衛官)への昇任試験の受験機会が与えられる場合がありますが、限られた人数しか昇任できない状況であり、極めて狭き門となっています。
受験可能な年齢は18歳以上33歳未満です。中卒以上ならば学歴の規定はありません。筆記試験の難易度は最も低くなっています。
次に難易度が高くなるのが「一般曹候補生」採用試験です。
採用されると2年9カ月の教育・訓練の後、選考により「三曹」に任官され、「非任期制自衛官」となります。
受験可能な年齢は18歳以上33歳未満です。高卒以上が対象です。筆記試験の難易度は「高卒警察官」の採用試験とほぼ同程度です。
一気に難易度が高くなるのが「自衛隊 幹部候補生」採用試験です。区分として「一般幹部候補生」(大学の文系卒・理工系卒のほか、陸自の音楽要員、海自・空自の飛行要員を含む)、「歯科幹部候補生」(歯学部卒)、「薬剤幹部候補生」(薬学部卒)の三つに分かれます。
この区分から受験要件が「大卒」または「大学院卒」となり、受験可能な年齢も、大卒の場合22歳以上26歳未満となります(大卒見込み者、院卒者、院卒見込み者は、別途規定あり)。
採用されるとすぐに「曹長」に任官され、一定期間の訓練の後「三尉」に昇任し、幹部自衛官となります。
筆記試験の難易度は「国家一般職(大卒)」「国家専門職」と同程度であり、難易度は高いです。加えて、志願者数に比べて採用数が少ないため、合格のための難易度はかなり高いことを認識する必要があります。難関の大学受験の一つである「防衛大学校」の受験と同程度の難易度の高さです。
このほかに、自衛官になるための学校へ入学して、自衛官になる方法があります(いずれも、年齢制限あり)。
・ 中卒者が陸上自衛官(非任期制自衛官)を目指すための「陸上自衛隊・高等工科学校」。
・ 航空機の操縦士を目指す「航空学生」。
・ 幹部自衛官を目指す「防衛大学校」。
・ 幹部自衛官としての医師・看護師を目指す「防衛医科大学校」。などがあります。
合格すると、各学校の生徒・学生となり、自衛官を目指して座学や厳しい訓練に明け暮れる毎日が待っています。休日はありますが、外部との連絡・接触や、敷地外への外出は厳しく制限されます。これが、一般的な高校や大学と異なる点です。
各学校の生徒・学生は、特別職の国家公務員の身分となります。学費は無料であり、制服などの衣類は貸与され、食事が支給され、宿舎費は無料になります。さらに、公務員としての手当てやボーナスも支給されます。それゆえ、これらの学校を卒業した後は、必ず自衛官に任官することが求められます。
将来、自衛官として働く大きな目標がある場合、これらの学校の学生は待遇がよいので(学費や生活費を負担する必要が無く、手当が支給される)、試験は高倍率となります。
2 自衛官 採用試験の特徴
自衛官の採用試験は、区分ごとに実施方式が異なります。
「自衛官候補生」採用試験は、1回の試験で、筆記試験、口述試験、適性試験、身体検査、経歴評定が実施されます。
「一般曹候補性」採用試験は、第1次試験と第2次試験に分けて実施されます。
第1次試験は、筆記試験です。高卒程度で択一式の、国語・数学・英語と、作文試験、適性検査が課されます。
第2次試験は、身体検査、口述試験が課されます。
「自衛官 幹部候補生」採用試験は、第1次試験と第2次試験に分けて実施されます。
第1次試験は、筆記試験です。大卒レベルの一般教養試験(択一式)と、専門試験(記述式)が課されます。
第2次試験は、小論文試験、口述試験、身体検査が課されます。
3 自衛官志望者が意識すべきこと
自衛官は国防を担う、重要な公務員です。統制された行動と、作戦に必要な強力な装備品(武器など)を扱うことが求められ、国民の大きな期待に応えると共に、近年では「平和維持活動」、「地雷除去」、「機雷除去」、「海賊対策」、「船舶の航行の安全確保」など、海外での活動で貢献することも求められます。そのため、大きな責任を自覚し、常に自らを律して行動する必要があります。
試験の際、受験者の所作は厳しくチェックされています。常にマナーを守り、姿勢を正し、明るい表情で、大きな声でハキハキ答え、キビキビ行動しましょう。
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